今回は、日本の産業を第一次産業、第二次産業、第三次産業に分け、それぞれの代表的な業種、特徴、企業例(該当する場合)を説明します。
第一次産業 (Primary Industry)
自然界に働きかけて直接富(生産物)を得る産業。原材料生産部門とも言えます。
農業
特徴: 土地を利用して作物を栽培(耕種農業)したり、家畜を飼育(畜産)したりする産業。食料供給の基盤であり、国土保全や文化継承の役割も担う。気候変動の影響を受けやすく、従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加などが課題。スマート農業の導入などが進められている。
代表的な企業/組織例:
個人農家、農業生産法人が中心。
全国農業協同組合連合会 (JA全農) – 農業資材供給、農産物販売など。
クボタ、ヤンマーホールディングス – 農業機械メーカー (※製造業にも分類)
カゴメ、キユーピー – 自社農場を持つ食品メーカー (※製造業にも分類)
林業
特徴: 山林を管理・育成し、木材を生産する産業。木材供給のほか、水源涵養、土砂災害防止、二酸化炭素吸収などの多面的な機能を持つ。長期的な育成が必要で、木材価格の低迷、担い手不足、輸入材との競合などが課題。
代表的な企業/組織例:
森林組合、個人経営の林家が中心。
住友林業 – 山林経営から住宅事業まで展開 (※建設業・不動産業にも関連)
王子ホールディングス、日本製紙 – 自社林を保有する製紙会社 (※製造業にも分類)
漁業(水産業)
特徴: 海や河川、湖沼で魚介類や海藻類を捕獲(漁労)したり、養殖したりする産業。水産資源の供給源。資源管理の重要性が高く、漁獲量の変動、燃油価格の高騰、漁業者の減少・高齢化、海洋環境の変化などが課題。養殖技術の高度化も進む。
代表的な企業/組織例:
個人漁業者、漁業会社、漁業協同組合 (JF) が中心。
マルハニチロ、ニッスイ (日本水産) – 大手水産会社 (漁撈、養殖、加工、販売まで幅広く展開 ※製造業・卸売小売業にも分類)
極洋
第二次産業 (Secondary Industry)
第一次産業で得られた原材料や、その他の資源を加工して製品やエネルギー、インフラなどを生産する産業。加工・処理部門。
鉱業、採石業、砂利採取業
特徴: 地下資源(金属鉱物、石炭、石油、天然ガスなど)や、岩石・砂利などを採掘・採取する産業。エネルギー資源や工業原料を供給する。国内資源は限定的で、輸入依存度が高い分野が多い。
代表的な企業例:
国際石油開発帝石 (INPEX) – 石油・天然ガス開発
石油資源開発 (JAPEX)
太平洋セメント、住友大阪セメント – 石灰石鉱山を保有 (※製造業にも分類)
建設業
特徴: 建物(住宅、ビル、工場など)や、土木構造物(道路、橋、ダム、トンネルなど)を建設する産業。社会インフラの整備や維持管理を担う。公共投資や民間設備投資の動向に左右される。ゼネコン、専門工事業者、ハウスメーカーなどがある。
代表的な企業例:
鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店 (スーパーゼネコン)
大和ハウス工業、積水ハウス (ハウスメーカー)
関電工、きんでん (電気設備工事)
製造業
特徴: 原材料や部品を加工・組み立てして、様々な製品(食料品、飲料、繊維、化学製品、医薬品、機械、電気機器、自動車、家具など)を生産する産業。日本の経済を支える基幹産業であり、輸出においても重要な役割を果たす。技術革新が求められ、国際競争が激しい。
代表的な企業例: (非常に多岐にわたるため、一部例示)
食料品: 味の素、明治ホールディングス
飲料: サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス
化学: 三菱ケミカルグループ、住友化学
医薬品: 武田薬品工業、アステラス製薬
鉄鋼: 日本製鉄、JFEホールディングス
機械: 三菱重工業、ファナック
電気機器: 日立製作所、ソニーグループ
輸送用機器: トヨタ自動車、本田技研工業
第三次産業 (Tertiary Industry)
第一次産業、第二次産業のいずれにも分類されない産業。形のないサービスや情報の提供、流通などが中心。サービス部門。
電気・ガス・熱供給・水道業
特徴: 生活や産業に不可欠なエネルギー(電気、ガス)や水を安定的に供給するインフラ産業。地域独占的な性質が強かったが、電力・ガスの小売自由化が進展。再生可能エネルギー導入なども進む。
代表的な企業例:
東京電力ホールディングス、関西電力など各地域の電力会社
東京ガス、大阪ガスなど各地域の都市ガス会社
東京都水道局など地方公営企業 (水道)
情報通信業
特徴: 通信サービス、放送、ソフトウェア開発、情報処理・提供サービス、インターネット関連サービスなどを含む。社会のデジタル化を支える成長産業。
代表的な企業例: NTT、KDDI、ソフトバンク、NTTデータグループ、Zホールディングス、楽天グループ
運輸業、郵便業
特徴: 人や物を運ぶサービス(鉄道、道路旅客・貨物、水運、航空)、倉庫業、郵便事業など。経済活動や生活の基盤。
代表的な企業例: JR東日本、ヤマトホールディングス、日本郵船、ANAホールディングス、日本郵政
卸売業、小売業
特徴: 商品を生産者から仕入れて流通させたり(卸売)、消費者に販売したり(小売)する産業。流通の中核を担う。
代表的な企業例: 三菱商事、イオン、セブン&アイ・ホールディングス、ファーストリテイリング
金融業、保険業
特徴: 資金の貸付・仲介(銀行)、有価証券の売買(証券)、リスク引き受け(保険)など、金融サービスを提供する産業。
代表的な企業例: 三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村ホールディングス、東京海上ホールディングス、日本生命保険
不動産業、物品賃貸業
特徴: 不動産の売買・賃貸・管理や、様々な物品(自動車、機械、OA機器など)のリース・レンタルを行う産業。
代表的な企業例: 三井不動産、三菱地所、オリックス
学術研究、専門・技術サービス業
特徴: 法律、会計、税務、デザイン、コンサルティング、広告、建築設計、学術研究機関など、専門的な知識や技術を提供するサービス業。
代表的な企業例: 電通グループ、博報堂DYホールディングス、野村総合研究所、弁護士法人、監査法人など
宿泊業、飲食サービス業
特徴: ホテル・旅館などの宿泊施設や、レストラン、カフェ、居酒屋などの飲食物を提供するサービス業。観光や人々の交流に密接に関連。
代表的な企業例: エイチ・ツー・オー リテイリング(ホテル阪急阪神など)、帝国ホテル、すかいらーくホールディングス、日本マクドナルドホールディングス
生活関連サービス業、娯楽業
特徴: 洗濯、理容・美容、浴場、旅行、冠婚葬祭、映画館、遊園地、スポーツ施設など、個人の生活や余暇に関連する多様なサービスを提供。
代表的な企業例: H.I.S.、JTB (旅行)、オリエンタルランド (テーマパーク)、コナミグループ (スポーツクラブ等)
教育、学習支援業
特徴: 学校教育(幼稚園から大学まで)、学習塾、語学学校、職業・教育支援施設など、教育や学習機会を提供する産業。
代表的な企業例: ベネッセホールディングス、リクルートホールディングス (教育関連事業) 、学校法人 (早稲田大学など)
医療、福祉
特徴: 病院、診療所、歯科診療所などの医療サービスや、介護保険施設、障害者支援施設、保育所などの社会保険・福祉・介護サービスを提供する産業。
代表的な企業例: (医療法人、社会福祉法人が中心) SOMPOホールディングス (介護事業) 、ニチイ学館
複合サービス事業
特徴: 郵便局(金融・保険窓口業務を含む)、農業協同組合など、複数の異なるサービスを一体として提供する事業所。
代表的な企業例: 日本郵政、JA (農業協同組合)
サービス業(他に分類されないもの)
特徴: 上記いずれにも分類されない多様なサービス。廃棄物処理、自動車整備、機械修理、職業紹介、ビルメンテナンス、警備業などを含む。
代表的な企業例: セコム、ALSOK (警備)、リクルートホールディングス (人材サービス)
公務(他に分類されるものを除く)
特徴: 国や地方公共団体が行う立法、司法、行政事務。警察、消防、国防なども含む。市場経済とは異なる原理で運営される。
代表的な組織: 各省庁、都道府県庁、市町村役場、裁判所、警察庁、消防庁など
まとめ
以上が第一次、第二次、第三次産業の主な業種とその概要です。実際には、企業によっては複数の産業分野にまたがる事業を展開している場合も多くあります。
転職先や、就職先を決める際の参考になれば幸いです!